2025.08.04
2026.02.11
「この形でいけそうだ。」
図面はまとまった。材料もある程度絞れた。機能も頭の中では成立している。
次に出てくるのが、この問いです。
「で、どうやって作る?」
押出か。コンプレッションか。インジェクションか。それとも切削や打ち抜きか。
この判断は、単なる製造方法の選択ではありません。
開発スケジュール
試作回数
金型コスト
設計変更の自由度
将来の量産単価
すべてに影響します。
成形方法の選択は、技術判断ではなく、”開発戦略そのもの“です。
目次
成形方法の選択ミスは、設計ミスよりも静かに、しかし確実に開発を遅らせます。
開発初期からインジェクション金型を起こしました。
しかし、
シールリップの微調整が必要
圧縮率が想定より高い
干渉が発生
設計変更のたびに金型修正。結果、修正費用が膨らみ、スケジュールは後ろ倒し。
設計が固まる前に“固い方法”を選ぶと、修正コストが跳ね上がります。
試作を簡易確認のみで進め、コンプレッションで量産。
すると、
バリ処理工数が想定以上
作業者依存が強い
不良率が安定しない
結果、単価が見積もりを超過。開発初期のコスト削減が、量産で利益を削る典型例です。
切削試作で形状確認。組み付けも問題なし。
量産前提でインジェクション金型を製作。金型費は数百万円規模。
しかし量産トライで、
ゴムの流れが偏る
欠肉が出る
薄肉部で強度不足
原因は、成形をした際の形状検証不足。
切削できたから金型成形でもできるわけではないのです。
金型改造では対応できず、作り直し。追加で数百万円、スケジュールは3か月以上遅延。
「形ができる」ことと「成形で成立する」ことは別です。
ゴム製品と言われて思い浮かぶものは、タイヤや輪ゴム、スーパーボールなどで、普段の生活の中でゴム製品単体に触れることは少ないと思います。一方で、ゴム製品は車や機械、扉、道路など生活のあらゆるところに使われています。防音や防振、シール性、反発性などゴム独自の物性により陰ながら世の中を支えているのがゴム製
構想から試作・量産まで、ゴム製品の開発の流れを徹底解説|失敗しないためのポイント
同じ図面でも、
コンプレッションなら黒字
インジェクションなら赤字
ということは普通に起こります。
成形方法は、
金型費
単価
人依存度
不良率
修正コスト
を通じて、製品の利益構造を決めます。では、主要な成形方法を整理していきます。

押出成形
コンプレッション成形
インジェクション成形
切削加工
打ち抜き加工
それぞれ、開発フェーズごとで向き不向きがあります。
| 方法 | 製品形状の特徴 | メリット | デメリット | 初期投資額(目安) | 納期スピード(目安) |
|---|---|---|---|---|---|
| 押出成形 | ・断面一定形状 ・長尺物(ホース・パッキン) ・連続形状 |
・長物に強い ・単価が安い(量産向き) ・材料歩留まり良い |
・端面精度が弱い ・断面変更不可 ・立体形状不可 |
★★☆ (金型数十万〜) |
★★☆ (約3〜5週間) |
| コンプレッション成形 | ・厚物・大物向き ・比較的単純〜中程度形状 ・自由度高い |
・金型費が比較的安い ・設計変更に柔軟 ・少量多品種に強い |
・バリ処理が必要 ・作業者依存が残る ・サイクルタイム長め |
★★☆ (数十万〜数百万円) |
★★☆ (約3〜6週間) |
| インジェクション成形 | ・小〜中サイズ ・薄肉・複雑形状向き ・高精度部品 |
・再現性が高い ・自動化しやすい ・バリが少ない ・大量生産向き |
・金型費が高額 ・設計変更コスト高 ・立ち上げ条件がシビア |
★★★★ (数百万円〜) |
★★★ (約4〜8週間) |
| 切削加工 | ・ブロック材から削り出し ・複雑形状対応可 ・サイズ自由度高い |
・金型不要 ・設計変更が容易 ・短納期対応可 |
・単価が高い ・量産不向き ・材料制限あり |
★☆☆ (ほぼ不要) |
★★★★ (約1〜3週間) |
| 打ち抜き加工 | ・薄物平面形状 ・板材から抜く ・2D形状 |
・金型費が安い ・単価が安い ・納期比較的短い |
・立体形状不可 ・厚物不可 ・精度制限あり |
★☆☆ (数万〜数十万) |
★★★☆ (約2〜4週間) |
初期投資が高い=悪ではない。
インジェクションは初期投資が高いですが、数量が増えると単価が下がりやすく、利益構造が安定します。
納期が短い=量産向きではない。
切削は速いですが、量産には向きません。“速い方法”と“儲かる方法”は別です。
大物・中物はコンプレッションが強い。
特に両手サイズ以上になると、インジェクションは金型コストが跳ね上がるケース、成形が出来ないケースがあります。
未加硫ゴムを金型にセットし、圧力をかけて加硫。
金型費:比較的安い
設計変更に柔軟
大物対応しやすい
少量多品種向き
バリ処理前提
作業者依存が残る
サイクルタイム長め
加熱したゴムを射出して充填→加硫。
再現性が高い
自動化しやすい
バリが少ない
大量生産向き
金型費が高額(数百万円〜)
設計変更が高コスト
立ち上げ条件がシビア
| 観点 | コンプレッション | インジェクション |
|---|---|---|
| 初期費用 | 低〜中 | 高 |
| 設計変更 | ◎ | × |
| 少量多品種 | ◎ | △ |
| 大量生産 | ○ | ◎ |
| 大物対応 | ◎ | △ |
| 自動化 | △ | ◎ |
設計が固まっていない→ コンプレッション
設計確定・数量確定→ インジェクション
コンプレッションは「柔軟性重視」
インジェクションは「効率重視」
優劣ではなく、今どの開発フェーズかで選びます。
| フェーズ | おすすめ |
|---|---|
| アイデア検証 | 切削・打ち抜き |
| 機能評価 | コンプレッション |
| 超小ロット | 切削・打ち抜き |
| 小ロット立上げ | コンプレッション |
| 大量量産 | インジェクション |
| 両手サイズ~1m超の製品 | コンプレッション |
| 長尺単一形状製品 | 押出 |
ゴム製品の開発は、材料や成形方法だけで決まるものではありません。
特に、両手サイズ以上、1mを超えるゴム製品になると、
金型構造の難易度が一気に上がる
材料の流れがシビアになる
成形条件の再現性が難しくなる
取扱い・脱型・搬送まで設計に含める必要がある
という、まったく別の世界に入ります。小物精密部品の延長では、成立しません。
私たちは、両手サイズ〜1m超のゴム製品を得意領域としています。
そして特長は、単なる成形対応ではなく、構想から量産立ち上げまでを一貫して伴走してきたことです。
実際の流れは、こうです。
何に使うのか
どの環境で使うのか
本当にゴムが最適か
ここから整理します。
いきなり金型は起こしません。
まずは、
脱型できるか
流れは成立するか
量産時に無理が出ないか
を前提に設計します。
大物の場合、いきなり量産金型はリスクが高い。
そこで、
切削加工で試作品を作る
実機テストをしてもらう
形状・寸法・機能を検証する
この段階で修正します。
テスト結果を踏まえ、
使用環境
応力状態
寿命要求
を基準に材料を決定。
単に金型を設計するのではなく、
量産として成立するか
再現性は出るか
工数は現実的か
まで含めて構想します。
大物金型は、
分割構造
脱型方法
加圧バランス
が肝になります。
ここで経験値が重要です。
条件出し
物性確認
バリ処理設計
作業性検証
まで含めて安定化させます。
大物ゴム製品では、
設計と成形が分断されている
試作と量産が別思想
材料決定が後追い
このどれかがあると、高確率でやり直しが発生します。
一貫して見ているからこそ、
どこで失敗するか
どこを先に潰すべきか
どこで投資すべきか
が分かります。
両手サイズから1mを超えるゴム製品の開発は、経験の差がそのまま結果に出ます。
「このサイズ、いけますか?」
その一言からで構いません。
構想段階から、一緒に整理します。
2025.08.04
材料選定・試作から量産立ち上げ、既存金型の移管、
特急案件への対応など、ぜひお気軽にご相談ください。