2025.09.24
2025.12.03
設備の老朽化やコスト改善、サプライヤーの変更など、ゴム製品の生産移管が必要になる場面は年々増えています。特に最近増えているのが、突然のサプライヤー廃業や納期遅延、品質問題など、想定外の事態に対応しないといけないケースです。
ゴム成形は材料配合、金型構造、工程条件、検査方法など、長年の経験や積み重ねによってノウハウ化されている部分が非常に多いです。そのため、仕様書や図面だけでは伝えきれない情報が多く、丁寧な情報共有と立ち上げプロセスを踏まないと、思わぬトラブルの連続となるリスク があります。
例えば、
といった、現場ではよく起こり得る問題です。
生産移管を成功させる鍵は、「リスクの全体像を理解し、事前に対策できる体制を整えること」、そして、「移管の経験値が高く、現場レベルで伴走できるパートナーを選ぶこと」にあります。
本コラムでは、ゴム製品の生産移管・金型移管で起こりやすい落とし穴と、その解決策について解説します。
目次
ゴム製品の生産移管は、できれば避けたい大きな決断です。社内の工数負荷も大きく、金型管理や立ち上げ評価など、想像以上に手間とリスクが伴います。それでも現実には、企業努力ではどうにもならない状況が突然訪れます。
ある日、取引先から「〇月で生産終了します」と連絡が来る
主要担当者の退任や後継者不在により、急遽生産継続が困難に
設備の老朽化やメンテ不能により、継続生産が不可能になる
「もっと早く言ってくれれば…」
そう思っても、お客さまは待ってくれません。
納期が守られない状況が繰り返され、生産計画に大幅な影響
材料調達トラブルから出荷停止、代替生産の検討が急務に
「また遅れています」「いつ出荷できますか?」
調整に追われ、現場が疲弊していく。
不良率が改善されず、選別や手直しに膨大なリソースが割かれる
納入後の市場クレームが発生し、早期の抜本的対策が必須に
「このままでは信頼を失う」
その危機感が、生産移管の引き金になる。
こうした状況では、限られた時間の中で確実に移管を成功させなければならないプレッシャー が非常に大きくなります。
しかし、ゴム製品の生産移管は、図面通りに作れば同じ物ができる…という単純な話ではありません。
材料配合やロット差の影響
金型の状態
加硫条件や工程ノウハウ(暗黙知)
検査基準・目視判断の基準
量産立ち上げの微調整
これらは長年の経験や蓄積で成立していることが多く、丁寧に情報を掘り起こし、共有しながら立ち上げないとトラブルの連続になります。
だからこそ生産移管は、「やむを得ず動くからこそ、絶対に失敗できない」非常に難易度の高いプロジェクトなのです。
ゴム製品の生産移管は、大きく分けると次の2つのケースがあります。
一見すると、「新規の方が難しそう」「既存金型なら簡単に移せる」と思われがちです。
しかし実際には、どちらも異なるリスク構造を持っており、注意すべきポイントが大きく異なります。
新規金型はゼロから立ち上げるため、自由度がある一方で、
想定どおりに立ち上がらないケースが多くあります。
図面どおりでも寸法が出ない
⇒ゴム特有の収縮率差・材料特性の誤差
試作回数の増加
⇒金型修正・材料調整・加硫条件検討に工数と時間がかかる
量産と試作で結果が異なる
⇒設備差や材料Lotの違いで再現性が取れない
立ち上げ遅延による納期リスク
⇒本番スタートの直前で不具合発生 → 生産計画が崩れる
ゼロからの立ち上げは、設計・工程・量産再現性のすべてで精度を高める必要があり、試行錯誤が必ず発生します。
既存金型は「すでに実績があるから安心」と思われがちですが、
むしろ移管の方がトラブルが多い と感じる現場担当者は少なくありません。
金型状態の把握不足
⇒摩耗・改造履歴・パーツ交換履歴が不明で再現できない
製造ノウハウ(暗黙知)の漏れ
⇒条件設定、品質の見極め、微調整方法が引き継がれない
設備差による寸法/物性の変化
⇒加硫プレス機能力差・温度分布差・金型温調
材料ロット差や配合差の影響
⇒現行品と同じ材料でも別メーカーの混練で物性が変動
生産条件がブラックボックス化している
「なぜその条件なのか」が分からず再現できない
「使える金型がある」を過信すると、立ち上げ後に品質崩壊するケースが非常に多いのが現実です。
<まとめ:新規立ち上げ vs 移管、それぞれの難しさ>
| 新規金型 | 既存金型移管 | |
|---|---|---|
| 期待するもの | 新しい最適化と改善 | 早期立ち上げと再現性 |
| 本当の難しさ | 試作〜量産の再現精度 | 暗黙知の抜け漏れ、情報不足 |
| 主なリスク | 試作回数の増大・時間遅延 | 品質バラつき・金型再調整 |
| 失敗すると | 納期遅延・コスト増 | 品質事故・市場クレーム |
どちらの場合も「丁寧な情報の掘り起こし」と「現場レベルの技術対応力」が成功の鍵になります。
金型移管は、新規金型の立ち上げと比べて「早く立ち上がるはず」と期待されがちです。しかし実際の現場では、むしろ 金型移管のほうがトラブルが多いと感じる担当者は少なくありません。
その理由は、金型そのものの状態 と 長年蓄積された暗黙知(ノウハウ) の両方が、移管時に大きな障壁になるからです。
以下では、金型移管に特有の5つのリスクを整理します。
移管前の金型情報が不十分なために、受け取った金型が想定と大きく異なることはよくあります。
結果、上手く立ち上げることができず、立ち上げ時間もコストも想定以上に膨らみます。
② 立ち上げノウハウ(暗黙知)が共有されない
ゴムは、金型そのものよりも「どう使われていたか」の情報の方が立ち上げに影響します。
例えば、
これらは 図面や仕様書に残っていない“現場の経験値” であり、移管時にごっそり抜け落ちることが多い。
結果、
「前の工場ではできていたのになぜ?」
「同じ金型なのに同じようにできない」
という事態が発生します。
③ 設備の相性問題(プレス機・温調・周辺装置の差)
金型は同じでも、使う設備が違えば別物になります。
プレス機のトン数・型締め圧
温度立ち上がり速度
板厚や平面のクセ
金型の取り付け方式(穴位置・プレート寸法)
これにより、「加硫ムラ」、「寸法の再現性低下」、「外観不良の増加」、「サイクルタイムの悪化」などが起こり、「移管してみたら全然別の製品が出来上がる」 という状況すら珍しくありません。
④ 材料の違いによる“物性・外観の崩れ”
同じ材料名でも、実は別物です。
配合が違う
ロット差が大きい
混練条件の違い
保管環境での劣化
“ゴム材料の違い”は、ゴム特有のクセで、少しでも材料が変わるだけで寸法も外観も物性も変わるという厄介さがあります。金型はそのままでも、寸法NG、バリ増加、気泡・ムラなどの不良が発生しやすくなります。
⑤ 外観・検査基準の“感覚差”によるクレーム化リスク
金型移管でもっとも見落とされるのが 検査基準の違い です。
見た目の許容基準
バリ許容
仕上げのレベル
過去の市場クレームを踏まえた社内基準
これらが曖昧なまま移管すると、
「前より仕上がりが悪い」
「客先がOKと言っていた基準が違う」
という認識のズレが生産現場を混乱させ、大きな品質問題に発展する危険性が高まります。
金型移管は、金型があるから早い、楽だと思われがちですが、実態は 金型状態 × 現場ノウハウ × 材料 × 設備 の4要素が噛み合わないと成立しません。
簡単に見えて実は最も難しい”作業なんです。
金型移管は、新規金型立ち上げより“速くて簡単”と思われがちですが、実際には 情報不足とノウハウギャップによるトラブルの発生率が高い工程 です。しかし、事前の準備と正しいプロセスを踏むことで、リスクを大幅に下げ、短期間で安定生産まで持っていくことが可能です。
以下では、金型移管を成功させるために押さえるべき5つのポイントを解説します。
移管で最も多いトラブルが、金型の状態が想定と違う こと。
これらを 移管前に診断 しておくことで、「受け取ってから修理だらけ」という最悪の事態を防げます。
金型は“生もの”。実際の状態を把握するのが成功の第一歩です。
図面だけでは移管は成立しません。
実際の立ち上げ・量産の要となるのは 現場のクセ です。
例えば、
材料の仕込み方
離型方法
バリが出やすいポイント
ガス抜き方法
仕上げの方法
過去のトラブル履歴と対処法
これらは仕様書に残らない“成果を生むノウハウ”です。移管時に徹底ヒアリングしなければ、再現性は出ません。
暗黙知をどこまで聞き出せるかで、立ち上げスピードが決まります。
同じ材料名でも、メーカー・混練条件・ロット差で結果は変わります。
ゴム材料は同じ材料種類でも配合パターンは無数にあり、この配合は99.9%開示されることはありません。
ゴム屋にとってゴム材料の配合はノウハウそのものです。
なので、金型移管時には
の確認が必要です。
ゴム材料の差は品質や成形条件に直結するので、初期段階での対応が求められます。
金型と設備はセットで考える必要があります。
プレス機の仕様(トン数・ストローク・デーライト・型締圧)
金型取り付け方法
分解方法
これらを移管前に診断しておくと、量産になってから出るはずの不良を、初期で潰すことができます。
金型移管は、“スピード勝負”の場面が多い一方で、雑に進めると確実に後で痛い目を見ます。
重要なのは、
試作から量産までのロードマップを明確に描き、順番を守ること。
金型現物チェック
金型の取付修正
材料手配
試作
不具合抽出
再試作
製品評価
量産条件の確定
量産立ち上げ
この流れを丁寧に踏むことで、移管で起こりやすいリスクをを抑え、短期間で量産安定に導くことができます。
以上のように、金型移管は、金型 × 材料 × 設備 × 暗黙知 という4つの変動要素を同時に扱う案件です。
だからこそ、「プロセスを知る人」と組むのが成功の近道
つまり、金型移管のプロセスを理解し、現場レベルで伴走できるパートナー が重要になります。
ゴム製品の金型移管は、“金型があるから簡単に移せる” というものではありません。
実際の現場では、
金型状態の違い
材料特性の違い
設備の癖
暗黙知の欠落
といった複数の要素が重なり、トラブルになりやすい工程です。
信栄ゴム工業が多くの企業から金型移管の相談をいただく理由は、次の3つの特長があるからです。
当社は創業以来、
両手サイズ〜1メートル超の大型ゴム製品の成形を得意分野としてきました。
大型製品は、小物とは全く別物です。そのため、大型製品の移管には、専門的な経験と再現ノウハウが必須です。
当社はこの大型分野で、
新規金型立ち上げ
他社からの金型移管
など数多く対応してきたため、“大型ならではのクセ” を熟知しています。
当社は、単に金型を受け取って加工する会社ではありません。
現場の技術者が実際にラインに入り込み、現場で“自分たちの目で”確認しながら進めます。
なぜここまでやるのか?それは、ゴムは机上では見えない“現場のクセ”が品質を左右する材料 だからです。
技術者が現場で伴走できる会社は実は多くありません。当社が移管の成功率を高められている理由の1つが、この伴走力です。
ゴム製品の移管が難しくなる最大の理由は、材料と工程条件の違いによって結果が大きく変わること。
同じ金型でも、
材料メーカーの違い
配合の微差
混練条件の違い
ロット差
温度ムラ
プレス機の能力差
これらが寸法・外観・物性に影響します。
当社には、長年の経験によって蓄積された
「材料 × 工程条件 × 金型」を最適化する技術ノウハウ があります。
このノウハウがあるからこそ、
他社で立ち上がらなかった金型
大型ゆえにトラブル続きの案件
といった難易度の高い案件にも安定的に対応できます。移管成功の決め手は、“材料と工程に強い会社”を選ぶことです。
金型移管は、金型・材料・設備・条件の4つの変動要素が絡む、非常に難しいプロジェクトです。
当社は、
大型ゴム製品の豊富な移管実績
技術者が現場に入り込む伴走体制
材料・工程条件の最適化ノウハウ
この3つを軸に、
「短期間での安定量産」を実現してきました。移管で悩んだとき、まず相談される存在でありたい。
その想いで、1つひとつの案件に向き合っています。
金型移管・生産移管は、
「やらなければならない」と分かっていても、
実際には多くの不安とリスクを伴うプロジェクトです。
金型の状態は本当に大丈夫か?
移管後に寸法や外観が変わらないか?
量産までにどれだけ時間がかかるのか?
今のサプライヤーのままで本当にいいのか?
こうした疑問や不安は、
移管を経験してきた技術者でなければ、なかなか答えが出ません。
当社では、
大型ゴム製品の移管経験
現場に入り込む伴走体制
材料・工程条件の最適化ノウハウ
を活かして、
“失敗できない移管” を支援しています。
もし、
サプライヤーの廃業・納期遅延で急ぎの移管が必要
金型はあるが、移管先が見つからず困っている
過去に移管で失敗した経験があり、不安がある
大型製品の安定量産に課題を抱えている
そんな状況があれば、
まずは一度ご相談ください。金型の状態診断、移管の流れ、立ち上げのポイントなど、
専門技術者が分かりやすくご説明します。「ちょっと聞いてみたい」
という段階でも大歓迎です。
あなたの会社の生産を止めないための最適な選択をご提案します。
2025.09.24
材料選定・試作から量産立ち上げ、既存金型の移管、
特急案件への対応など、ぜひお気軽にご相談ください。