2026.01.06
2026.01.22
「図面は完璧なんです。寸法も合っているし、干渉もない。なのに、なぜかうまく作れないんです。」
これは、ゴム製品の開発相談を受ける中で、本当によく聞く言葉です。
設計レビューも通っている。社内の承認も取れている。材料も問題なさそう。
それでも実際に作ってみると、
金型から外れない
無理に外すと裂ける
一部が欠ける
量産すると不良が多発する
といったトラブルが起きます。
設計者からすると、「なぜ?」としか言いようがありません。
「図面通りに作ったのに、図面通りにならない」
実はこの現象、ゴム製品では珍しいことではありません。なぜなら、ゴム製品は、図面の正しさだけでは成立しない製品だからです。
目次
結論から言うと、ゴム製品が図面通りに作れない最大の理由は、
「成形できる形」と「金型から“抜ける形”は別物だから」
金属や樹脂の部品設計に慣れていると、この感覚はなかなかピンときません。
金属や樹脂の多くは、
固い
形状保持性が高い
成形後、そのまま型から外せる
という前提があります。
一方、ゴムはどうでしょうか。
柔らかい
伸びる
変形する
この性質自体はゴムの長所ですが、成形工程では大きな制約になります。
なぜなら、ゴム製品は成形後、その成形品を必ず「金型から引き抜く(脱型する)」という工程があるからです。
設計図面には、
寸法
公差
形状
は描かれています。しかし、
どの方向に抜くのか
どこが引っ掛かるのか
どこに力が集中するのか
といった 脱型時の挙動は、図面にはほとんど表現されません。ここに、ゴム製品特有の落とし穴があります。
図面上は成立していても、
抜く方向に逃げ場がない
内側に引っ掛かる形状がある
薄肉部に無理な力がかかる
こうした形状は、成形した瞬間に“詰み”になります。
このあたりを考慮せずに金型を起こしてしまうと、金型の作り直しや大幅な設計変更を迫られる可能性があります。
多くの人が誤解していますが、ゴム製品の難しさは「成形」そのものではありません。
本当に難しいのは、成形後に、いかに無理なく金型から外せるか、です。
脱型時には、
ゴムが引っ張られる
局所的に応力が集中する
薄い部分や角からダメージを受ける
このとき、形状が少しでも無理をしていると、
裂ける
欠ける
変形する
といった不具合が、一気に表に出ます。
ここまでをまとめると、
図面が正しい ≠ 作れる
寸法が合っている ≠ 抜ける
見た目がきれい ≠ 量産できる
ということになります。
ゴム製品においては「図面通りに作る」ことより「無理なく作れる形にする」ことの方が重要です。
下記ではこの話をさらに具体化して、
金型からの脱型がなぜすべての起点になるのか
パーティングラインの設定が形状をどう縛るのか
材料の流れを無視すると何が起きるのか
といった、現場で実際に起きている失敗例を交えながら解説していきます。ここからが、「ゴム製品は形状で9割決まる」と言い切れる理由です。
ゴム製品と言われて思い浮かぶものは、タイヤや輪ゴム、スーパーボールなどで、普段の生活の中でゴム製品単体に触れることは少ないと思います。一方で、ゴム製品は車や機械、扉、道路など生活のあらゆるところに使われています。防音や防振、シール性、反発性などゴム独自の物性により陰ながら世の中を支えているのがゴム製
構想から試作・量産まで、ゴム製品の開発の流れを徹底解説|失敗しないためのポイント
ゴム製品で最初に立ちはだかるのが、金型から外れない問題です。
内側に段差がある
返し形状(アンダーカット)がある
深くて細い溝がある
垂直に近い立ち上がり
が挙げられます。
図面を見ると、「寸法も合っているし、問題なさそう」に見えますが、実際の成形現場では…
成形後、金型から抜けない
無理に外すと裂ける
一部が金型側に残る
毎回、作業者が苦労する
これは、ゴムが引っ張られながら抜ける材料だからです。金属や樹脂のように「スッと外れる」前提で描かれた形状は、ゴムでは通用しません。
ゴム製品の形状は
「作れるか」ではなく「無理なく抜けるか」から考える
ここを外すと、材料も条件も関係なく失敗します。
次に多いのが、パーティングライン(型の分割線)に起因するトラブルです。
見た目がきれいな位置に分割線を設定
寸法基準を取りやすい位置で分割
シンメトリー(左右、上下対称)を優先
これらを優先してパーティングラインを決めるのは、設計として自然な考え方です。
しかし、ゴム製品では分割線の位置=品質リスクになります。
実際に起きるトラブルとして
シール面にバリが出る
バリが噛んでシール性が出ない
バリ処理工数が増える
量産でバラつきが出る
が挙げられますが、特に致命的なのは、機能を担う面(シール面・摺動面)にパーティングラインが来るケースです。
機能面を担う箇所にパーティングラインがくると、パーティングラインが原因となってシール性が落ちたり、液漏れが発生したり取り返しがつかない不具合に繋がる可能性があります。しかもパーティングラインは一度金型を作るとパーティングラインの位置を変更するのはほぼ不可能で、新たに金型を起こす必要に迫られます。
パーティングラインは、見た目ではなく「機能」で決める
ゴム製品では、「どこに分割線を持ってくるか」で製品寿命や不良率が大きく変わります。
最後は、材料の流れを考慮していない形状です。
ゴムは金型内を、
ゆっくり
押されるように
順番に
流れていきます。
図面上では問題ないのに、
急に薄くなる部分
角が多い形状
肉厚が極端に違う箇所
こうした形状は、最後に充填される部分が決まってしまいます。
欠肉が出る
物性にムラが出る
一部だけ弱い
見た目はOKでも、すぐ壊れる
こういった事象が発生します。試作では偶然うまくいったとしても、量産では安定しないこともよくあります。
ゴム製品の形状は「流れる前提」で設計しないと成立しない
ゴムは「入れたら勝手に隅々まで行き渡る材料」ではありません。
ここまでの3例に共通するのは、図面の完成度ではなく、成形プロセスへの理解不足です。
抜けるか
バリが機能を邪魔しないか
均一に流れるか
これらは、図面だけを見ていても判断できません。
だからこそ、ゴム製品では
「図面を完成させる前」に成形目線でチェックすること
が、圧倒的に重要になります。
ゴム製品の開発相談を受けるとき、私たちはまず図面の細部を見る前に、ある共通したポイントを確認します。
それは、「この形は作れるか?」ではなく、「この形は、安定して量産できるか?」という視点です。
①金型から“無理なく”脱型できるか
最初に見るのは、脱型方向と引っ掛かりです。
抜く方向は明確か
内側に引っ掛かる形状はないか
薄肉部に無理な力が集中しないか
ここで違和感がある形状は、材料や条件以前にアウトになることが多いです。
ゴム製品では「脱型できるかどうか」が形状成立の第一関門です。
②パーティングラインは機能性を邪魔しないか
次に確認するのが、パーティングラインの位置です。
シール面に来ていないか
応力が集中する位置にないか
バリ処理が現実的か
見た目がきれいでも、機能を損なう位置に分割線がある形状は量産で必ず苦労します。
パーティングラインは「図面の都合」ではなく「製品機能」から決める
③肉厚は均一に近いか
ゴム製品では、肉厚の差がトラブルの温床になります。
極端に厚い部分がないか
急激に薄くなる箇所がないか
厚肉と薄肉が隣接していないか
肉厚差が大きいと、
流れが乱れる
物性ムラが出る
脱型時に破損しやすくなる
といった問題が起きやすくなります。
ゴム製品は「均一に近い肉厚」が基本
④材料が自然に流れる形状か
形状を見ながら、材料がどう流れるかを頭の中でシミュレーションします。
最後に充填されるのはどこか
角や薄肉部に無理がないか
ガス抜きが必要にならないか
材料の流れを無視した形状は、試作では良くても量産で安定しません。
ゴムは「流れる前提」で形状を考える材料です。
⑤量産時に再現できる形状か
最後に見るのが、人や条件に依存しすぎないかです。
作業者の熟練度に左右されないか
微調整が必要な形状になっていないか
季節やロットでバラつかないか
量産では、「うまく作れる」より「誰が作っても同じになる」ことが重要です。
もしこれらを無視して進めると、
試作を何度もやり直す
金型修正が止まらない
量産後に不良が多発する
結局、形状を変えることになる
という遠回りになりがちです。
そして多くの場合、こう言われます。
「最初に相談しておけばよかった…」
ゴム製品は、図面を完成させてから相談するより、形が固まりきる前に相談したほうが結果的に、開発期間が短く、金型コストも抑えられ、量産も安定します。
この形、抜けるのか不安
図面を描いたけど違和感がある
金型を起こしていいか判断できない
そんな段階での相談が、いちばん効果的です。
信栄ゴム工業では、図面の有無に関わらず、構想段階からゴム製品開発をお手伝いしています。
「この形、大丈夫そうですか?」
そんな一言からで構いません。
2026.01.06
材料選定・試作から量産立ち上げ、既存金型の移管、
特急案件への対応など、ぜひお気軽にご相談ください。