産業機械の継ぎ手に使われる角形パッキンー試作は成功したのに量産で一部だけ漏れが発生した理由ー
産業機械の継ぎ手部に使用されるゴムパッキンは、設備の密封性を支える重要な部品の一つです。中でも大口径の角形パッキンは、わずかな設計差や成形ばらつきが、漏れや設備トラブルに直結することがあります。
今回ご相談いただいたのは、試作段階では問題なく密封できていたにもかかわらず、量産後に「一部だけ漏れが発生する」というトラブルでした。
締結条件を見直しても改善せず、増し締めを行うと別の箇所から漏れが発生する――現場では対応に苦慮されている状況でした。
本記事では、この事例をもとに、なぜこのような現象が起きたのか、そして同様のトラブルを防ぐために重要な考え方について解説します。
目次
発生状況 具体的な症状
対象となったのは、産業機械の継ぎ手部に使用される大口径の角形パッキンです。試作段階では問題なく密封できていたものの、量産品では以下のような症状が発生していました。
- フランジの一辺のみで漏れが発生
- 対角側では問題なし
- 締結順序を変えても同様の位置で再現
- 増し締めを行うと別の箇所から漏れが発生
- 温度上昇時に漏れ量が増加
このように、全周ではなく「一部だけ漏れる」という点が大きな特徴でした。
「ボルトは締め直しました。」
「パッキンも新品に交換しました。」
「前と同じ材質です。」
それでも、なぜか漏れる。
ゴムパッキンの漏れは、設備保全や設計の現場で非常によくあるトラブルです。
最初はにじむ程度だったものが、いつの間にか広がり、気づけばクレームや設備停止につながる。
多くの現
ゴムパッキンが漏れる本当の原因~材料劣化と設計ミス、そして「成形」まで含めて考える~
よくある誤解
このようなトラブルが発生すると、
- 材質の選定が間違っているのではないか
- ゴム硬度が合っていないのではないか
といった「材料起因」の問題として捉えられるケースが多くあります。しかし実際には、ゴム材料そのものではなく、面圧分布の不均一が原因となっているケースがほとんどです。
本当の原因:面圧分布の不均一
今回のケースでも、問題の本質は「局所的な面圧不足」にありました。特に大口径かつ角形のパッキンでは、以下の要因が重なりやすくなります。
■角形特有の応力集中
⇒角部と直線部ではゴムの変形挙動が異なり、面圧が均一にかかりにくくなります。その結果、角部や特定の位置でシール性が低下することがあります。
■フランジのたわみと締結ばらつき
⇒大口径になるほど、フランジ自体の剛性やボルト締結のばらつきの影響を受けやすくなります。これにより、局所的に面圧が不足する箇所が生じます。
■成形ばらつきと金型の影響
⇒量産工程では、ゴムの流動や加硫収縮、金型構造の影響により、厚みや形状に微小なばらつきが生じます。特に角形形状では、角部と中央部で寸法ばらつきが出やすく、これが密封性に影響を与えます。
なぜ試作では問題がなかったのか
試作段階で問題が出なかった理由はシンプルです。
- 少量生産で条件が安定している
- 成形条件が丁寧に管理されている
- 個体差が表面化しにくい
つまり、試作は「理想状態」に近い条件で作られているのに対し、量産では「ばらつき」が前提になります。この差が、量産時のトラブルとして顕在化します。 「この形でいけそうだ。」
図面はまとまった。材料もある程度絞れた。機能も頭の中では成立している。
次に出てくるのが、この問いです。
「で、どうやって作る?」
押出か。コンプレッションか。インジェクションか。それとも切削や打ち抜きか。
この判断は、単なる製造方法の選択ではありません。
ゴム製品の成形方法は”開発段階”で決めよう ― 試作から量産まで失敗しない選び方 ―
対処方法:設計条件の見直し
本件では、局所的な面圧不足を解消するために、設計条件の見直しを行いました。具体的には、フランジのたわみや締結条件を踏まえ、面圧がより均一にかかるようパッキンの厚みを調整しています。
ただし、単純に厚みを増やすだけでは、過圧縮による劣化や変形のリスクが高まります。そのため、ゴム硬度についても見直しを行い、適切な反発力と密封性のバランスを取る設計としました。
このように、大口径パッキンにおいては「寸法」だけでなく、「設備との関係性」を踏まえた設計が重要になります。
量産後に発覚すると大きなロスになる
今回のケースでは、量産段階で不具合が発覚したため、
- パッキン形状の再設計
- 材料条件の見直し
- 再評価試験のやり直し
- 金型の大幅修正
といった対応が必要となりました。
その結果、立ち上げまでに想定以上の工数と時間を要することとなり、開発スケジュールにも大きな影響を与えました。
このような手戻りは、コストだけでなく、社内外の調整負荷や信頼低下にもつながるリスクがあります。
まとめ ゴム部品は“単体”では成立しない
今回の事例からも分かる通り、大口径の角形パッキンは、ゴム単体で成立する部品ではありません。
- フランジ構造
- 締結条件
- 成形ばらつき
- 金型構造
これらを含めた「システム」として成立させる必要があります。特に、止められない設備においては、試作段階から量産ばらつきを前提とした設計が重要になります。
ゴム製品の調達は、「価格」や「納期」だけで判断できるものではありません。
なぜならゴム部品は、図面や仕様だけでは成立しないケースが多く、サプライヤーの技術力や対応力によって、品質・寿命・量産安定性が大きく左右されるからです。
実際の現場では、同じ図面、同じ材料名、同じ用途であっても、
【チェックリスト付き】ゴムサプライヤーはどう選ぶべきかー長期的に任せられる会社の見極めポイントー
ご相談について 早め早めのご相談を
大口径パッキンやシール部品の設計では、図面通りに作るだけでは解決できない問題が多く存在します。
信栄ゴム工業では、金型・成形・使用環境を踏まえた「量産前提の設計支援」を行っています。
止められない設備に関わるゴム部品でお悩みの場合は、図面が無くてもOKです、お早めにお気軽にご相談ください。