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用途に合わないと大惨事!|失敗しないゴム材料の選定ポイント

ゴムってどれも一緒だと思っていませんか?色は黒色だし、柔らかくて、伸び縮みするのがゴムで、タイヤも輪ゴムもホースもゴムはゴムでしょ?と。確かにゴムはゴムです。
しかし、ゴムにはたくさんの種類があるんです。その数、約20種類・・・ゴム材料の種類と特徴を把握せずに選定して使用していると、大変なことになってしまうかもしれません・・・
すぐにボロボロになっちゃう」「電気がめっちゃ通って困る」「カチコチになって使い物にならない
ゴムを使っていてこんな場面に遭遇したことはありませんか?この原因は、大半がゴムの種類が用途や使用環境に合っていないからです。

どうやってゴム材料を選んだらいいかわからない!」という方に向けて、失敗しないゴム材料選びのポイントを解説します。

ゴム材料選びのよくある”失敗パターン”とは?

「ゴムってどれも同じでしょ?」

そう思って材料を選んだ結果、思わぬトラブルにつながるケースは少なくありません。
現場では、こんな会話がよく交わされています。

【現場でよくあるやりとり】

会話シーン よくある失敗 原因(技術的背景)
現場担当A:「前と同じ黒いゴムでいいよね?」
設計B:「そうそう、たぶん同じ感じで大丈夫!」
→ 数ヶ月後…
「あれ、表面がひび割れてる!?」
屋外で使用したらすぐに劣化
ひびが割れた
天然ゴム(NR)など耐候性の低い材料を使用。
屋外用途ならEPDMが適切。
設備保全C:「オイルの中でも使えるって聞いたんだけど…」
購買D:「NBRじゃなくてSBRだったかも?」
オイル環境でゴムが膨潤(ふくらむ)
ベトベトに
SBRは耐油性が弱い。
NBRを選定すべきだった。
開発E:「高温の蒸気でも平気って言ってなかった?」
協力会社F:「CRなら大丈夫と思ってたけど…」
高温下で硬化・ひび割れが発生 CRは中温までは対応可だが、
高温蒸気環境ではフッ素ゴムが必要。
品質G:「通電試験したら漏電した!?」
設計H:「え、ゴムって電気通すの?」
絶縁材に使ったゴムが導電性だった 導電ゴムを誤使用。
用途に応じて非導電タイプを選定すべき。
購買I:「コスト優先で柔らかい材料にしたら…」
現場J:「締め付けたらつぶれて漏れた!」
強度不足でシール性能が出ない ゴム硬度・圧縮永久歪の見誤り。
使用環境に合う硬度設計が必要。

 

失敗の原因は「ゴムの種類選定ミス」です。

このようなトラブルの多くは、用途や環境に合わないゴムを選んでしまったことが原因です。

ゴムには実は約20種類もの材料があり、

耐熱性・耐油性・耐候性・電気特性など、それぞれ特性が大きく異なります。

「柔らかければOK」

「とりあえず黒いゴムなら同じでしょ」

…といった感覚で選定してしまうと、

使用環境によっては数週間で劣化してしまうこともあります。

次の章では、代表的なゴム材料(天然ゴム、SBR、NBR、EPDM、フッ素ゴム、シリコン、CR)について、

それぞれの特徴と選び方のポイントをわかりやすく比較していきます。

代表的なゴム材料の特徴

 

ゴムと一口にいっても、その性質は種類によってまったく異なります。

ここでは、工業製品によく使われる代表的な7種類のゴムについて、特徴と適した用途をわかりやすく比較します。

【ゴム材料の種類と主な特徴】

ゴムの種類 主な特徴 耐熱性 耐油性 耐候性 電気特性 コスト 主な用途
NR(天然ゴム) 弾性・耐摩耗性が高く、機械的強度に優れる。コストも低い。 △(中) ×(弱い) ×(弱い) ◎(絶縁性良) ◎(安価) 防振材、タイヤ、ホース、ベルト
SBR(スチレンブタジエンゴム) NRに似た特性で加工性が良く、安価。 × × ◎(安価) タイヤ、パッキン、ゴムロール
NBR(ニトリルゴム) 耐油性・耐摩耗性に優れ、燃料・潤滑油にも対応。 × ○(中程度) Oリング、オイルシール、燃料系部品
EPDM(エチレンプロピレンゴム) 耐候性・耐オゾン性・耐水性に優れる。屋外用途に最適。 × ○(中程度) パッキン、屋外シール材、電気絶縁部品
CR(クロロプレンゴム) 耐候性・耐油性・耐熱性のバランスが良く、万能タイプ。 ○(中程度) ホース、ベルト、防振ゴム
シリコンゴム(VMQ) 耐熱・耐寒性が非常に高く、食品・医療分野でも使用可能。
(-50〜200℃)
× △(やや高価) パッキン、ガスケット、医療部品
フッ素ゴム(FKM) 耐熱・耐油・耐薬品性が非常に高い。高温環境で使用可能。
(-20〜250℃)
×(高価) 自動車エンジン部品、化学装置、シール材

 

💡 ポイント

  • 「安価なゴム」は大量使用やコスト重視の量産品に最適。

  • 「高価なゴム」は特殊用途での信頼性・寿命重視に向いています。

  • 安さだけで選ぶと逆にコスト増(交換頻度・不良対応)になるケースも。

表の最後に「コスト」という項目を追加してみました。
コストとどうバランスを取るのかもすごく重要です。次章ではコストと機能について触れてみます。

 

コストと性能

ゴム材料の選定で最も悩ましいのが「性能」と「コスト」のバランスです。

同じ形状の製品でも、使用するゴムによってコストは2倍〜5倍変わることがあります。

 

しかし、ここで重要なのは「初期コストではなく、ライフサイクルコストで考える」という視点です。

たとえば、安価なゴムを使って短期間で劣化・破損してしまえば、

交換工数や停止時間、クレーム対応など、目に見えないコストが積み上がります。

一方で、使用環境に最適なゴムを選べば、

結果的に寿命が延びてトータルコストを抑えることができます。

💡 例①:屋外シール材のケース

NR(天然ゴム)は初期コストは安価ですが、紫外線で劣化しやすく屋外使用には不向き。

一方、EPDMを採用すれば材料費は上がるものの、交換頻度が1/3以下になることもあります。

💡 例②:油圧装置のシール部品

コストを抑えるためにSBRを使ったところ、作動油で膨潤し数週間で漏れ発生。

NBRを選べば材料単価はやや高いものの、油に強く安定稼働が長期的に確保できます。

結果的に「停止リスクの低減」という見えないコスト削減効果が生まれます。

💡 例③:食品ラインのパッキン部品

汎用ゴム(CR)を使ったが、洗浄時の熱湯や薬品で変質し、頻繁な交換が必要に。

シリコンゴムやフッ素ゴムを採用すれば、初期費用は上がっても衛生性・耐熱性が向上し、

清掃頻度の低下や長寿命化でトータルコストは下がります。

【ざっくりとしたコスト感】

材料 コスト目安 コメント
NR・SBR ★☆☆ 安価で入手性が高い。汎用ゴム。
NBR ★★☆ 耐油性重視でコスパ良好。
EPDM ★★☆ バランス型。屋外・水回りに最適。
シリコン(VMQ) ★★★ 高価だが高温・低温・衛生対応。
フッ素ゴム(FKM) ★★★★ 高機能・高耐久・高コスト。
CR(クロロプレン) ★★☆ 中庸タイプで扱いやすい。

💬 開発・設計の現場でよくある失敗

  • 「NBRならなんでもOK」と思って油以外の環境で使って劣化

  • 「とりあえずEPDMで」と屋外+油接触環境に使って膨潤

  • 「コストを抑えよう」とSBRに変えたら半年で硬化


まとめると…

  • 材料費の“安さ”は、実は全体コストの一部に過ぎない。

  • 「環境 × 寿命 × 信頼性」で見たときの最適コストを選ぶことが重要。

  • そのためには、試作段階で環境条件を想定して選定するのがポイント

ここまで見てみると、最適なゴム種類を選ぶには、どうも使用環境が大切だな、というのが見えてきました。

 

使用環境に合わせたゴム材料選び

ゴムは、見た目が似ていても「使う環境」によって最適な種類がまったく異なります。

ここでは、よくある使用環境別におすすめのゴム材料をまとめました。

「どのゴムを選べばいいか分からない」という方は、まずこの表を参考にしてください。

 

【使用環境別ゴム材料の選び方】

使用環境 適したゴム材料 理由・特徴 注意点
屋外・日光・雨ざらし環境 EPDM、CR 耐候性・耐オゾン性が高く、紫外線や雨に強い。 NRやSBRは紫外線で劣化しやすく不向き。
油・燃料に触れる環境 NBR、フッ素ゴム(FKM) 耐油性・耐燃料性に優れ、膨潤や溶解を防ぐ。 EPDMやSBRは油で膨張・劣化。
高温・高圧環境(100℃以上) シリコン(VMQ)、フッ素ゴム(FKM) 熱に強く、弾性維持性が高い。 CRやNBRは高温で硬化しやすい。
低温環境(−30℃以下) シリコン(VMQ)、EPDM 低温でも硬化しにくく、柔軟性を維持。 一部NBRは低温で硬化・割れ。
水回り・蒸気環境 EPDM、フッ素ゴム(FKM) 耐水・耐スチーム性に優れる。 NBRは熱水で劣化が早い。
薬品・溶剤を扱う環境 フッ素ゴム(FKM)、EPDM(薬品による) 多くの薬品に耐えるが、溶剤系には注意。 事前に薬品データとの適合確認が必要。
食品・医療用途 シリコン(VMQ) 無臭・無毒で衛生的。食品衛生法・FDA規格対応可。 機械的強度はやや低め。

 

💡 選定のコツ

  • まずは「何に触れるか(油・水・薬品)」と「どんな温度環境か(高温・低温)」を明確にする。

  • そこに「コスト」や「寿命」を加味して最適材料を選ぶのが基本です。

  • 迷った場合は、実際の使用条件をもとに専門メーカーへ相談するのが確実。

【試作段階での確認ポイント】

ゴム材料を選ぶ際は、試作段階で次の3点を押さえておくと失敗が減ります。

  1. 使用環境の再現性(温度・圧力・液体などの条件を実機に近づける)

  2. 経時変化の評価(弾性・硬度・表面状態を時間経過で確認)

  3. 成形性とコストのバランス(試作では安価材料→最終では耐久材など段階的に検討)

まとめ
ゴム選びは「見た目」ではなく「環境」で決まります。

適材適所を押さえることで、トラブルを防ぎ、コストを抑え、

結果的に“長持ちするものづくり”につながります。

ここまで特徴と使用環境についてまとめてきました。
最後に大切なのが用途です。

 

用途に合わせたゴム材料選び

【用途別 ゴム種類早見表】

 

使用環境・用途 主なおすすめ材料 理由・特徴 コスト感 選定のコツ
屋外での防振・パッキン用途(日光・雨・風にさらされる) EPDM、CR 紫外線やオゾンに強く、長期間屋外でも劣化しにくい ★★☆(中コスト) 「黒くて柔らかいから何でもOK」と思いがちだが、NRやSBRは屋外ではひび割れやすい。
油やグリースのかかる機械部品 NBR、フッ素ゴム(FKM) 鉱物油や燃料に強く、膨張・溶解を防ぐ NBR:★☆☆(低)FKM:★★★(高) コストを抑えるならNBR、高温油や燃料系にはFKMが安全。
高温環境(100〜200℃)でのシール・パッキン シリコン(VMQ)、フッ素ゴム(FKM) 弾性維持性が高く、熱硬化しにくい ★★★(高) シリコンは食品・医療用途にも使える万能型。熱+薬品にはFKM。
低温・寒冷地での防振・緩衝材 シリコン(VMQ)、EPDM 低温でも硬化しにくく、柔軟性を保つ ★★☆(中〜高) 冬季の屋外設備や冷凍機器周辺にはEPDMまたはシリコンを。
水回り・蒸気の多い環境(バルブ・パッキン) EPDM、フッ素ゴム(FKM) 水・熱水・スチームに強い ★★☆(中〜高) NBRは熱水で劣化するため避ける。EPDMがコスパ◎。
薬品・溶剤に触れる設備周り フッ素ゴム(FKM)、EPDM(用途により) 多くの薬品に耐性。 ★★★(高) 使用薬品を明確にし、ゴムメーカーに適合確認を。
食品機械・医療機器 シリコン(VMQ) 無臭・無毒・透明性があり衛生的 ★★★(高) FDA対応グレードを選ぶと安全性が担保できる。
一般的な防振材・緩衝材(コスト重視) SBR、NR 弾性・加工性に優れ、安価 ★☆☆(低) コスト優先で屋内用途なら最適。ただし耐候性・耐油性は低い。

 

ここまでのことを参考にゴム材料選びをしてください。
最後にゴム選びの三原則を伝授します。

  • 使用環境をまず明確にする

     「屋内 or 屋外」「油・薬品・水に触れるか」「温度条件」などを具体化する。

     → これが決まらないと適材が選べません。

  • “使えそう”ではなく“使える”を選ぶ

     似た特性でも、耐久性・コスト・硬度など微妙な差で寿命が倍以上違うことも。

  • 試作で必ず“環境テスト”を行う

     実際の温度・圧力・接液条件を想定して評価すると、量産後のトラブルを防げます。

 

ゴムは見た目こそ似ていますが、その性能・寿命・コストは選ぶ材料によってまったく異なります。

「どの環境で、どんな目的で使うのか」を明確にし、特性とコストのバランスを考えた選定が、結果的にトラブルを防ぎ、長寿命で安定した製品づくりにつながります。

つまり、“適材適所のゴム選び”こそが、ものづくりの信頼性を支える土台。

初期コストだけでなく、ライフサイクル全体を見据えて選ぶことで、

コスト削減と品質向上の両立が実現します。

ゴム選びで迷ったら――

ぜひ「使用環境 × 耐性 × コスト」の三つの視点を思い出してください。

最適な材料選びが、あなたの製品を“長持ちするものづくり”へ導きます。

お困りの際は、信栄ゴム工業にご相談ください!

 

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