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試作品はできたのに製品化できない ~新素材開発で直面した意外な壁~

数年前、ある食品器具向け製品の開発についてご相談をいただきました。
私たちにとって興味深かったのは、その製品にゴムが使われていたことです。

ゴムは自動車や産業機械、水回り設備などで使用されることが多く、食品器具で使用されるケースは決して多くありません。

さらに、お客様からはもう一つ要望がありました。
環境負荷低減のために、リサイクル材料を活用したいというのです。

本来であれば廃棄されてしまう材料に新たな価値を与え、もう一度製品として生まれ変わらせる。
その発想に私たちは強く惹かれました。
「面白そうだ。」
そう思ったのが、この開発に取り組むことを決めた理由です。

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開発は想像以上に長い道のりだった

開発計画はシンプルでした。材料構想を立て、試作を行い、改良を重ねながら性能を作り込み、必要な試験をクリアした上で量産へ進む。
言葉にすると簡単ですが、実際にはそう簡単には進みません。

今回の開発では、ゴム材料に詳しいパートナー企業にも協力いただきながら材料開発を進めました。

特に難しかったのが、リサイクル材料の扱いです。
環境負荷低減というメリットがある一方で、配合量を増やしすぎるとゴム本来の作業性が失われてしまう可能性があります。極端な場合には、成形そのものが成立しなくなることもあります。

そのため、

・環境配慮
・製品性能
・量産時の作業性

この三つを同時に成立させる必要がありました。
私たちは配合を見直しながら試作を繰り返し、最終的には5種類以上の配合を評価することになりました。

ようやく見つけた「これだ」という材料

試作を重ねる中で、徐々に手応えを感じる材料が見えてきました。そして、お客様にも実際に試作品を使用していただき、それぞれの使用感や使い勝手を確認していただきました。

性能評価だけでは分からない感覚的な部分も含めて比較を重ねた結果、最も評価の高かった配合が決定しました。
性能も良い。
使用感も良い。
お客様にも納得いただけた。

私たちは、「いよいよ量産化へ進める」。そう考えていました。
あとは食品関連製品として必要な試験をクリアすれば、量産に向けた準備を進めるだけです。

しかし、ここからが本当の勝負でした。

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思わぬ試験結果

試験結果は、まさかの規格外でした。

開発スタートからすでに1年以上。
ようやくゴールが見えたと思った矢先に、私たちは新たな壁に直面することになったのです。

最初に疑ったのは、リサイクル材料でした。
環境配慮のために採用した材料です。通常の配合とは異なる材料を使用している以上、まずそこに原因があると考えるのは自然なことでした。

そこで私たちは、性能や使用感を維持できる範囲でリサイクル材料の配合量を調整しながら再度試作と評価を行いました。
しかし結果は変わりませんでした。

想定していたほど数値は改善せず、規格値にも届かなかったのです。

原因は別にある」。そう考えざるを得ませんでした。

本当に難しいのは原因が分かってから

改めて材料全体を見直した結果、当初想定していなかった別の要因が浮かび上がってきました。
そこで、その要因を抑制するための添加剤を選定し、新たな配合を試作しました。

原因が分かれば解決できると思われるかもしれません。
しかし、本当に難しいのはそこからです。

試験結果を改善できても、今度は作業性が悪くなる。
作業性を改善すると、今度は性能が下がる。
性能と作業性の両方を満たしても、試験結果が基準に届かない。

まるで風船を押さえ込むように、一つを改善すると別の場所が膨らむ。そんな状態が続きました。

求められる性能。規格への適合。そして量産できる作業性。

その全てを満たす配合を探すために、何度も試作と評価を繰り返したのです。その結果、最終的には試験結果を規格内へ収めることができました。

開発開始から1年以上。

ようやく量産へ向けた道筋をつけることができたのです。

開発は正解を探す仕事ではない

今回の案件を通じて改めて感じたことがあります。
それは、開発は最初から正解が分かっている仕事ではないということです。

今回も当初はリサイクル材料が原因だと考えていました。
しかし実際には違いました。思い込みを捨てて仮説を立て直し、一つひとつ検証を繰り返したことで初めて解決策へたどり着くことができたのです。

また、性能だけを追い求めても製品にはなりません。どれだけ良い性能が出ても、安定して製造できなければ量産はできません。
逆に作りやすさだけを優先すれば、お客様が求める性能は満たせません。

開発とは、そのバランスを探し続ける仕事なのだと思います。

試作品は完成してからが本当のスタート

 

今回の案件では、性能評価が終わった時点で「もう少しで完成だ」と感じていました。
しかし実際には、そこからが本当のスタートでした。

法規制への適合。
品質の安定化。
量産時の作業性。
試作品の段階では見えなかった課題が次々と現れます。

だからこそ、製品開発では試作品が完成したことよりも、その後の検証と改善の積み重ねが重要になります。

おわりに

今回の案件は、私たちにとっても非常に学びの多い開発案件でした。開発をスタートした時点では、どのような課題が待ち受けているのか分かりませんでした。

性能評価をクリアした時にはゴールが見えたと思いましたし、試験で規格外となった時には正直なところ頭を抱えました。
しかし、その都度立ち止まり、仮説を立て、検証を繰り返したことで、最終的には製品化への道筋をつけることができました。

私たちは日頃、自動車や産業機械向けのゴム製品を数多く製造しています。
一方で、今回のような新しい用途や新しい材料に挑戦する開発案件も大切にしています。
なぜなら、これまでにない課題へ挑戦することで、新しい技術や知見が生まれ、それが既存製品の品質向上や新たな提案にも繋がっていくからです。

「こんな材料はできないだろうか」
「環境配慮と性能を両立できないだろうか」
「今までにない製品を形にしたい」
そうしたテーマは、すぐに答えが見つかるものではありません。

だからこそ面白いのです。

信栄ゴム工業では、お客様、材料メーカー、協力企業と力を合わせながら、試作と検証を繰り返し、一つひとつ課題を解決していくことを大切にしています。
まだ世の中にない製品や、新しい材料の活用を検討されている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。完成した図面や仕様書がなくても構いません。

「こんなことができたら面白い」
そんなアイデアの段階から、一緒に形にしていくお手伝いをさせていただきます。

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