2026.07.22
金属部品の表面処理・塗装・メッキなどで「ここだけ処理したくない」という課題に対応するゴム製マスキング治具。
金属部品の図面から治具を設計し、使用環境や処理液の温度・性質を確認したうえで、試作・評価・量産まで対応した開発事例をご紹介します。
目次
金属部品の表面処理では、製品全体を処理するのではなく、「この部分だけは処理したくない」というケースがあります。
こうした処理禁止部分には、マスキングテープやキャップ、プラグなどが使用されます。
しかし、製品サイズが大きい、形状が特殊、既製品では十分に密着しないといった場合には、専用のマスキング治具が必要になります。
そこで活用できるのが、製品形状に合わせて設計するゴム製マスキング治具です。
信栄ゴム工業では、金属部品の図面をもとに、マスキングする箇所や実際の使用方法、表面処理液の温度・性質まで確認しながら、
ゴム治具の設計・試作・量産まで一貫して対応しています。
今回ご紹介するのは、直径φ250~φ350程度の金属部品に使用する表面処理用マスキング治具の開発事例です。
昨年から5品番以上を立ち上げるなかで、
金属部品の寸法どおりに作るだけでは液漏れする
パーティングラインの位置によっても漏れが発生する
材料によってフィット感が変わるなど、ゴム製マスキング治具ならではの設計上のポイントも見えてきました。
この記事では、実際の開発事例をもとに、表面処理用のゴム製マスキング治具を設計する際に重要なポイントをご紹介します。
今回の開発で、お客様から最初にいただいたのはゴム治具の図面ではありません。
いただいたのは、表面処理を行う金属部品そのものの図面でした。
そこから、
どの部分をマスキングする必要があるのか
どこまでゴムで覆うのか
どのように金属部品へ取り付けるのか
作業者がどのように着脱するのか
どの程度の締め付けが必要なのか
といった条件を整理し、ゴム製マスキング治具の形状を設計していきました。
つまり、完成した図面をもとにゴム製品を成形した案件ではありません。
金属部品の図面から、必要となるゴム製品そのものを考えるところから始まった開発案件です。
「ここを処理したくない」という目的は決まっていても、「どのようなゴム治具を作れば実現できるのか」はまだ決まっていない。
私たちは、そうした段階から製品開発に携わっています。
その治具が、どこで、どのように使われるのか。
ここを理解しなければ、実際の工程で使える治具にはなりません。
今回の開発では、お客様の工場にも伺い、実際の表面処理工程を確認しました。
治具をどのように金属部品へ取り付けるのか。
どのような状態で表面処理されるのか。
作業者はどのように治具を着脱するのか。
処理液にどの程度の時間触れるのか。
さらに、使用される表面処理液の温度や性質についても確認しました。
ゴムは、使用する液体や温度によって適した材料が変わります。
処理液に対する耐性が不足していれば、膨潤や硬化、劣化などが起こる可能性があります。
一方で、耐薬品性だけを考えればよいわけでもありません。
繰り返し使用する治具であれば、装着しやすさや取り外しやすさも重要です。
金属部品に強く密着させようとして硬くしすぎれば作業性が悪くなり、反対に柔らかすぎれば十分なシール性を確保できない可能性があります。
だからこそ、「この材料なら処理液に耐えられるか」だけではなく、「この工程で実際に使いやすいか」まで考える必要があります。
図面だけで完結させず、使用環境を知る。
これも、ゴム製品を開発するうえで大切にしていることの一つです。
実際に設計と試作を進めるなかで、まず課題になったのが寸法設定でした。
マスキングしたい金属部品の寸法が分かっているのであれば、その寸法に合わせてゴム治具を作ればよさそうに思えます。
しかし、実際にはそう簡単ではありません。
金属部品の寸法にそのまま合わせてゴム治具を作ると、装着した際にわずかなガバつきが生じました。
そして、その小さな隙間から表面処理液が入り込み、マスキングしたい部分まで液が回ってしまいます。
つまり、マスキング治具では、「金属部品に入る」ことと、「処理液を止められる」ことは別の問題です。
ゴムには弾性があります。
その特性を利用し、装着した際に適度な締め付け力が生まれるように寸法を設定する必要があります。
金属部品の寸法に対して、ゴム治具をどの程度小さくするのか。
どの部分にどれだけ締め代を設けるのか。
締め付けが強すぎれば装着できず、弱すぎれば液漏れします。
この「締め代の設計」が、マスキング治具の機能を左右する重要なポイントになります。
もう一つ、試作を重ねるなかで分かったのが、パーティングライン(PL)の重要性です。
ゴム製品は金型を使って成形するため、金型の合わせ面にはパーティングラインが生じます。
通常のゴム製品ではほとんど問題にならないようなわずかな段差でも、液体を遮断するマスキング治具では問題になる場合があります。
PL部分に生じた細かな凹凸やバリが液体の通り道になることがあります。
そこから処理液が侵入し、液漏れにつながってしまうのです。
そのため、マスキング治具を設計するときには、単にゴム製品の形状だけを考えればよいわけではありません。
どこにPLを配置するのか、どの方向から金型を開くのかという金型構造まで考える必要があります。
今回の開発でも、試作結果を確認しながらPL位置を見直し、処理液が入り込みにくい構造へと改善していきました。
ゴム製品として成形できる形と、マスキング治具として機能する形。その両方を成立させることが必要です。
ゴム製マスキング治具の設計で、もう一つ難しいのが材料です。
同じ形状、同じ寸法であっても、使用するゴム材料が変われば、金属部品へ装着したときのフィット感は変わります。
ゴムには材料ごとに、
硬さ
伸びやすさ
変形の仕方
元の形へ戻ろうとする力
表面の感触
などの違いがあります。
そのため、図面上では同じ寸法であっても、材料が変わるだけで、
「少し緩い」
「締め付けが強い」
「装着しにくい」
といった違いが生まれます。
特にマスキング治具では、密着性と作業性のバランスが重要です。
液漏れを防ぐことだけを考えて締め付けを強くすると、今度は作業者が装着できなくなってしまいます。
反対に、装着しやすさを優先して緩くすれば、処理液が侵入する可能性が高くなります。
さらに、実際には処理液の性質や温度に対する耐性も考慮しなければなりません。
つまり、材料を決めてから寸法を考えるのではなく、材料と寸法をセットで考える。
これがゴム製マスキング治具を設計するうえで重要になります。
実際に試作品を製作し、金属部品へ装着し、表面処理工程で使用していただきながら評価していきます。
確認するのは、
処理液が入り込んでいないか
必要な範囲を正しくマスキングできているか
締め付けが強すぎないか
作業者が無理なく着脱できるか
繰り返し使用できるか
といった点です。
評価結果によっては、寸法を変更します。
PL位置を変えることもあります。
材料そのものを見直すこともあります。
そうして、設計 → 試作 → 現場評価 → 修正を繰り返し、実際の工程で使用できる治具へと仕上げていきます。
今回の案件でも、こうした開発を重ねながら、昨年から現在までに5品番以上を立ち上げ、量産につなげています。
今回ご紹介したのは、金属部品の表面処理工程で使用するマスキング治具の開発事例です。
しかし、「この部分だけ処理したくない」という課題は、さまざまな製造工程で発生します。
例えば、表面処理だけでなく、塗装やメッキ、洗浄、各種薬液処理などでも、特定の箇所だけを一時的に覆う必要がある場合があります。
もちろん、処理液や温度、使用条件によって適したゴム材料や構造は異なるため、すべての工程で同じ治具が使用できるわけではありません。
しかし、
市販のマスキングキャップではサイズが合わない
テープで毎回マスキングするのに手間がかかる
製品形状が特殊で既製品では対応できない
繰り返し使用できる専用治具を作りたい
といった場合には、専用設計したゴム製マスキング治具が解決策の一つになる可能性があります。
ゴム製マスキング治具を作りたいと思っても、
「どのような形状にすればよいのか分からない」
「ゴム治具の図面がない」
「どの材料を選べばよいのか分からない」
ということも多いと思います。
信栄ゴム工業では、完成したゴム製品の図面がなくてもご相談いただけます。
今回のように、マスキングしたい金属部品の図面や実物を確認し、
どの箇所を処理したくないのか、
どのような工程で使うのかをお聞きしたうえで、ゴム治具の形状を検討することが可能です。
必要に応じて使用現場も確認し、処理液の性質や温度、作業方法まで踏まえながら、材料や形状、締め代、金型構造を考えていきます。
ゴムは、図面寸法どおりに作れば必ず機能する素材ではありません。
ゴムの弾性をどう使うか。
どこにPLを配置するか。
どの材料を使うか。
実際の現場でどう使われるか。
そうした条件を一つずつ組み合わせることで、初めて目的に合ったゴム製品になります。
信栄ゴム工業では、ゴム製品の設計から試作、金型製作、量産まで一貫して対応しています。
「この部分だけ処理したくない」
「既製品ではうまくマスキングできない」
「専用治具を作りたいけれど、まだ図面がない」
そんな段階からでも、ぜひ一度ご相談ください。
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材料選定・試作から量産立ち上げ、既存金型の移管、
特急案件への対応など、ぜひお気軽にご相談ください。