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そのゴム製品、明日もつくれますか?供給停止を防ぐBCPで確認すべき5つの情報

「長年お願いしてきた仕入先から、来月で生産を終了すると連絡があった」

「設備が故障し、いつ生産を再開できるか分からないと言われた」

「これまで使っていたゴム材料が手に入らなくなった」

ゴム製品の調達では、こうした問題が突然表面化することがあります。急いで代わりのゴムメーカーを探しても、そこで必ず聞かれるのが、金型、図面、材料、品質基準、生産数量などの情報です。
ところが、長年同じ仕入先に任せてきた製品ほど、必要な情報が社内に残っていないことがあります。
図面はあるものの最新版か分からない。材質欄には「NBR」としか書かれていない。金型がどこにあるのか、誰の所有物なのかも曖昧。
良品の判断は、現行メーカーの経験に任せきりになっている。
そのような状態では、代替先が見つかっても、すぐに生産を始めることはできません。

ゴム製品の供給停止を防ぐために必要なのは、代替サプライヤーを探しておくことだけではありません。
その製品を、別の場所でも再現できるだけの情報を残しておくことです。

本記事では、ゴム製品のBCPを考えるうえで、平常時に確認しておきたい5つの情報を解説します。

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 ゴム製品は、現物があれば同じ製品を作れるわけではない

金属部品であれば、現物を測定して図面を起こし、同じ材質を指定することで、ある程度は再現できる場合があります。しかし、ゴム製品は外形寸法だけで品質が決まるものではありません。
同じNBR、EPDM、シリコーンゴムであっても、配合によって硬さ、伸び、反発性、耐熱性、耐油性、圧縮永久ひずみなどは異なります。
また、同じ金型を使用しても、成形機、温度、圧力、加硫時間、材料の仕込み方などが変われば、寸法や外観、物性に差が生じることがあります。

さらに、長く生産されてきたゴム製品には、図面に記載されていない調整や、現場で積み重ねられた成形・仕上げのノウハウが含まれていることも少なくありません。

供給停止後の復旧が長引く大きな理由は、「つくれる会社がない」ことだけではなく、「現在の製品が、何を基準に、どのようにつくられているのか説明できない」ことにあります。

だからこそ、供給が続いている平常時に、次の5つの情報を整理しておく必要があります。

 1.金型の所有者・保管場所・状態は確認できていますか?

ゴム製品の供給を引き継ぐ際、最初に確認したいのが金型です。既存の金型を使用できれば、新しく製作する場合と比べて、立ち上げに必要な時間や費用を抑えられる可能性があります。
一方で、「金型がある」ことと「その金型を移管して生産できる」ことは同じではありません。少なくとも、次の5点を確認しておく必要があります。

  1. 金型の所有者と、移管・持ち出しの可否

  2. 金型の保管場所

  3. 金型の製作時期と修理履歴

  4. 摩耗、錆、変形、破損など現在の状態

  5. 移管先の成形設備で使用できる金型か

まず確認したいのは、金型の所有者です。過去に金型代を負担していたとしても、所有権や保管、返却に関する取り決めが明確になっているとは限りません。見積書、注文書、契約書などを確認し、誰の所有物なのか、外部へ持ち出せるのかを整理しておく必要があります。

保管場所も重要です。取引しているゴムメーカーの工場にあると思っていた金型が、実際には別の協力工場で使われていることもあります。緊急時に初めて所在を確認するのではなく、保管先を事前に把握しておくことが大切です。

また、長年使われてきた金型は、摩耗や錆、変形、部分的な補修によって、製作当初とは状態が変わっている可能性があります。現在の仕入先では調整しながら使えていても、移管時の輸送や再設置をきっかけに不具合が表面化することも考えられます。製作時期だけで判断せず、使用状況や修理履歴、現在の状態を現物で確認する必要があります。

そして、金型を持ち出せたとしても、移管先の設備で使用できなければ生産はできません。金型の外形寸法や重量、成形方法、取り付け方、加熱方法などを確認し、移管先の成形機に適合するかを判断します。

重要なゴム製品については、供給停止が起きる前に金型の写真、寸法、重量、構造などを記録し、必要に応じて移管候補先に確認してもらうと安心です。

 2.図面と設計変更の履歴は残っているか

「図面があるから大丈夫」と思っていても、その図面が現在生産されている製品と一致しているとは限りません。

長く使われているゴム製品では、使用中に発生した不具合への対応や組付け性の改善などを理由に、寸法、形状、硬さ、仕上げ方法が変更されていることがあります。
その変更が正式に図面へ反映されず、現場の指示や仕入先のノウハウとして残っているケースもあります。

確認したいのは、次のような情報です。

  • 最新版の製品図面と改訂日

  • 図面の変更履歴と変更した理由

  • 現在使用している製品と図面との相違

  • 寸法公差と、特に重要な寸法

  • 穴あけ、研磨、接着などの二次加工

  • 金具や樹脂部品など、組み合わせる部品の仕様

  • 現行品のサンプルや承認された見本

特に大切なのは、変更された内容だけでなく、「なぜ変更したのか」を残すことです。理由が分からなければ、代替生産時に不要な変更だと判断して元へ戻してしまい、過去と同じ不具合を繰り返すおそれがあります。

図面がない場合でも、現物を測定して形状を確認することはできます。ただし、使用によって変形・摩耗した現物しか残っていなければ、新品時の寸法を正確に再現できないことがあります。また、現物からは、その寸法が機能上重要なのか、単に成形上生じたものなのかまでは判断できません。

図面、変更履歴、現行品を一つの組み合わせとして管理することが、立ち上げ時の手戻りを減らします。

 3.ゴム材料と、本当に必要な物性、説明できますか

図面の材質欄に「NBR」「EPDM」「シリコーンゴム」などと書かれていても、それだけで同じ性能の製品をつくれるわけではありません。

ゴム材料は、原料ゴムに補強材、加硫剤、老化防止剤などを配合してつくられます。同じ種類のゴムで、硬さが同じであっても、配合が異なれば耐熱性、耐油性、耐候性、反発性、引張強さ、伸び、圧縮永久ひずみなどが変わります。

そのため、可能であれば次の情報を確認します。

  • ゴムの種類と硬さ

  • 材料メーカー、材料名、材料番号

  • 必要な物性値

  • 使用温度と温度変化

  • 接触する油、薬品、水、蒸気など

  • 使用時にかかる圧力や荷重

  • 屋内・屋外などの使用環境

  • 顧客指定の規格や含有物質に関する条件

ただし、現行メーカーが独自に配合した材料の場合、詳細な配合内容や材料情報を入手できないこともあります。そのときに重要になるのが、「現在とまったく同じ材料を探すこと」だけにこだわらず、「その製品には、どのような性能が必要なのか」を整理することです。

例えば、油に触れるからNBRが指定されているとしても、油の種類、温度、接触時間によって求められる耐油性は変わります。単に材質名を引き継ぐのではなく、使用環境と必要な機能を共有できれば、入手可能な材料の中から代替案を検討できる可能性が広がります。

材料情報が残っていない場合は、現物の分析も一つの手段です。ただし、分析だけですべての配合や性能を完全に特定できるとは限りません。だからこそ、使用条件、不具合履歴、必要な耐久性など、現物からは読み取れない情報を残しておくことが大切です。

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 4.良品を判断する品質基準と検査方法は共有できますか

新しいゴムメーカーで試作した製品を評価するとき、「今までの製品と同じように」という説明だけでは、合否を判断できません。

ゴム製品には、寸法だけでなく、バリ、へこみ、傷、変色、接着状態など、外観に関する確認項目があります。しかし、その許容範囲が図面や検査基準書に明記されず、現行メーカーと担当者の間の共通認識だけで運用されていることがあります。

次の内容を整理しておくと、代替生産時の評価が進めやすくなります。

  • 重要寸法と許容差

  • 寸法の測定位置、測定器、測定方法

  • バリ、傷、へこみ、変色などの外観基準

  • 良品と不良品の境界を示す限度見本

  • 硬さや引張試験などの物性確認

  • 気密、漏れ、荷重、耐久性などの機能試験

  • 検査頻度と検査成績書の要否

  • 過去に発生した不具合と、その対策内容

ゴムは弾性があるため、測定する位置や押さえ方、使用する測定器によって数値が変わることがあります。図面に寸法が記載されているだけではなく、どのように測るのかまで共有することが重要です。

また、すべての寸法や外観を同じ重要度で扱うのではなく、製品の機能に直結する項目と、影響が小さい項目を分けておく必要があります。何を最優先で守るべきかが分からなければ、試作と評価を何度も繰り返し、量産開始までの時間が延びてしまいます。

品質基準は、不良品を見つけるためだけのものではありません。新しい生産先が、目指すべき品質を正しく理解し、短期間で安定生産へ移行するための共通言語でもあります。

 5.必要数量・生産条件・必要納期を把握していますか

試作品を一つつくれることと、必要な数量を安定して供給できることは別の問題です。

ゴム製品は、大きさ、形状、加硫時間、使用する成形機によって、一度に生産できる数量が変わります。特に大型のゴム製品や、金属との加硫接着、複数の二次加工を伴う製品は、一つひとつの工程に時間がかかり、対応できる設備や生産能力も限られます。

代替先を検討する際は、次の情報を伝えられるようにしておきます。

  • 月間・年間の使用数量

  • 1回当たりの発注数量

  • 繁忙期の最大使用数量

  • 発注頻度と納入頻度

  • 希望する生産開始時期と納期

  • 現在の在庫数量と安全在庫

  • 成形後に必要な仕上げや二次加工

  • 金具、芯材などの支給部品

  • 洗浄、梱包、表示、トレーサビリティーの条件

  • 初品評価や量産承認に必要な期間

年間使用量だけではなく、月ごとの変動や1回当たりの必要量まで共有することが重要です。年間数量としては対応可能でも、短期間に注文が集中すれば、生産能力が追いつかないことがあります。

また、「在庫がなくなる日」が、そのまま代替品の完成期限ではありません。そこから逆算して、金型の確認や修理、材料の選定と調達、試作、評価、量産条件の調整に必要な期間を確保しなければなりません。

現在庫を1日当たりの使用量で割れば、おおよその残り日数が分かります。その期間から、試作と評価、金型整備、材料調達、量産準備に必要な日数を差し引くと、実際に検討を始めなければならない期限が見えてきます。

供給停止の連絡を受けてから動き始めるのではなく、「いつまでなら選択肢を持って動けるのか」を把握しておくことがBCPにつながります。

ゴム製品のBCPチェックリスト 

対象となるゴム製品について、次の質問に答えられるか確認してみてください。

確認する情報 主な確認内容
金型 所有者、保管場所、移管の可否、修理履歴、現在の状態、設備との適合性
図面 最新図面、変更履歴、現行品との相違、二次加工、現行品サンプル
材料 ゴムの種類、硬さ、材料番号、必要物性、使用環境、指定規格
品質 重要寸法、測定方法、外観基準、限度見本、機能試験、不具合履歴
生産 使用数量、発注単位、変動、工程、梱包、在庫、必要納期

一つでも答えられない項目があれば、供給停止が起きた際に、そこで検討が止まる可能性があります。
特に、自社製品の機能を左右するゴム製品や、停止すると完成品を出荷できなくなるゴム製品から優先して確認することをおすすめします。

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 情報が揃っていなくても、今から整理できることがあります

長年使用しているゴム製品では、図面や材料情報、過去の変更履歴がすべて揃っていないことも珍しくありません。しかし、情報が不足しているからといって、供給継続の検討ができないとは限りません。

現行品、古い図面、検査記録、過去の不具合報告、発注履歴、使用環境、金型の状態など、現在残っている情報を集めることで、不足しているものが見えてきます。
現物測定や材料分析、使用条件の聞き取り、金型確認などを組み合わせれば、再製作の可能性を検討できる場合もあります。

ただし、情報が少ないほど、確認、試作、評価には時間がかかります。現行の仕入先から問題なく納入されているうちであれば、必要な情報を確認し、試作や代替材料の評価を行う時間も確保できます。

すぐに金型を移したり、仕入先を変更したりする必要はありません。
まずは、重要なゴム製品について、別の場所で生産する場合に何が不足しているのかを確認する。それだけでも、供給停止時の初動は大きく変わります。

 まとめ ゴム製品のBCPは「別の場所でも作れる状態」を準備すること

ゴム製品の供給停止に備えて確認しておきたいのは、次の5つの情報です。

  1. 金型の所有者・保管場所・状態

  2. 最新図面と設計変更の履歴

  3. ゴム材料と本当に必要な物性

  4. 品質基準と検査方法

  5. 必要数量・生産条件・必要納期

代替サプライヤーの候補を見つけておくだけでは、ゴム製品の供給をすぐに引き継ぐことはできません。
必要なのは、その製品がどのような機能を担い、何を基準につくられ、どの条件で供給されているのかを、別のメーカーへ引き継げる状態にしておくことです。

供給が止まってから不足情報を集めるのか。供給が続いているうちに、再現に必要な情報を整えておくのか。その違いが、生産停止の期間を大きく左右します。

信栄ゴム工業では、既存金型の移管、現物からのゴム製品の再製作、材料の見直し、試作から量産まで、一つひとつの条件を確認しながら対応方法を検討しています。
大型ゴム製品や金属との加硫接着を伴う製品についてもご相談いただけます。

「現在の仕入先から、いつまで供給されるか不安がある」

「金型はあるが、別の工場で使えるか分からない」

「図面や材料情報が十分に残っていない」

このような段階でも、まずはお手元にある情報から、再製作の可能性と不足している確認事項を整理します。そのゴム製品を明日もつくり続けるために、供給が止まる前にご相談ください。

 

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